月の窓から

Late, by myself, in the boat of myself

バラの花

バラの花。アフロディーテの花。完全な美。ずっとバラの花が苦手だった。
欠けることも、慄くこともなく、愛でられることを自明と感じているかのように、匂い高くバラは咲く。
だから舞台の外の世界の外れで息をしている自分には、直視できなかった。

神谷美恵子「生きがいについて」を読んだ。一生の友と呼べそうな一冊と出会うことができた。
これは私のよく知っている「絶望」について書かれた本だった。
それを知っていることが、世界との断絶だとたびたび感じてきたけれど、それは実は普遍につながっているのだと諭された。
精神科医神谷美恵子がその身を捧げた、ハンセン病療養施設の愛生園に関する書籍や、ハンセン病歌人明石海人の評伝を夜通し読んだ。
「深海に生きる魚族のやうに、自らが燃えなければ何処にも光はない」
そうして私はあの堂々と咲くバラが見たくなった。

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色とりどりに咲き誇るバラの匂いにつつまれて、背筋を伸ばした。
私の立っている、ここが私の世界の中心だった。
そうして私はバラと友達になった。